Thursday, June 30, 2016

樺島那央さん「難民と共に生きる」

毎年620日は国連が定めた「世界難民の日」です。

ここサンディエゴには、毎年2000人以上の難民が安全な生活をゼロからスタートするために世界中からやって来ます。実は私たちは知らないうちに、学校やスーパーなど様々な場所で日々たくさんの難民の方々とすれ違っているのです。


そこで6月のぽーと会では、難民の問題について知識や理解を深めるためのセミナーを行いたいと考え、サンディエゴで難民支援に取り組んでいる若き日本人女性、樺島那央(かばしま なお)さんをスピーカーにお迎えしました。


ナオさんは、ビルマ(ミャンマー)からの難民(主にカレン族)を受け入れサポートし、アメリカ生活や学校教育への適応、就労など、自立の支援を行う非営利団体Karen Organization of San DiegoKOSD2009年に自力で立ち上げた方です。


セミナーでは、難民発生の経緯、現状、彼らが経てきた壮絶な過去、アメリカに移住するまでのプロセス、これからの彼ら自身の課題、支援活動の課題について、スライドやビデオを用いて丁寧に解説してくださいました。


難民と呼ばれる方たちには分類が幾つかあり、そのうえ難民受け入れ国へ移住できるのは難民全体のうち1%程度でしかないこと、幸運にも移住できた彼らを待っている沢山の課題(言葉の壁、仕事を見つける苦労、生活習慣の違い、学校での勉強などなど)について、多くを学ばせて頂きました。

KOSDはカレン族の難民支援を様々な角度から行っています。その全ては、いつか彼らが「自立」して生きていけるようにするためです。

どこかの町の農園で従業員を募集中と聞けば、ナオさん自らトラックを運転して彼らを連れていき、頭を下げるそうです。子供たちの英語力向上のため、勉強のサポートも日常的に行っています。


高校では、英語だけでも大変なところへ第二外国語があるため、やる気を失ってしまうカレンの子供たちも多かったことから、San Diego Union School Districtと掛け合い、カレン語が出来れば第二外国語としてみなしてもらえる許可を取ることが出来たそうです! 高校を卒業できれば就職も今よりもっと可能になるので、サンディエゴのカレン族コミュニティは今このニュースに湧き立っているそうです! 地元紙San Diego Union Tribuneでも報じられました。


また、非営利のKOSDが活動を続けていくにはグラントが欠かせません。最初のころは年間100種類ものグラントにアプライしたそうです。2011年に晴れてフェデラルのグラントが貰えるようになってからも、毎週最低1つはアプライし続けているとのこと。これは並大抵のことではないはずです。

セミナーの中でオさんは繰り返し「Imagination」という言葉を使って、彼らの通ってきた「道のり」や「気持ち」を思いやることの大切さを伝えてくれました。 私たちもアメリカに適応する際に様々な経験をしてきましたが、難民の方達の日々の挑戦がどれ程のものかということを「Imagination」をもって思いを馳せるとき、ほんの少しでも彼らに寄り添うことが可能になるのかもしれません。

10歳の時に「将来は難民のために働く」と決意し、以来まわりの人に宣言し続けたナオさんは今、描いたとおりの人生を生きています。「沢山の導きがあった」「日本人だからこそニュートラルに出来ることがある」というナオさん。


2007年からカレン族の受け入れが始まって以来、既に100人以上のカレン族の赤ちゃんがサンディエゴで誕生したそうです。「彼らはまるで自分の子供のようです」と嬉しそうに笑うナオさんは、「コミュニティを育てている」お母さんなのですね。


最後に、参加してくださった高校生とお母さんから頂いた感想をご紹介します。高校生:「この頃よくニュースで難民についての問題を耳にすることがあったのですが、映像で見るイメージでしか"難民"ということをあまりよく知りませんでした。ですが今回お話を聞くことで、改めて難民とはどういうことをいうのか知ることができました 。樺島さんの仕事の内容はもちろん、努力してorganizationを創る姿が凄いなぁと感銘を受けました。自分は将来何をしていこうか、何をしたらいいのか、と改めて考えるきっかけにもなりました。」 お母さん:「世界には色々な人達がいることを娘に知って欲しいと思い、また知ることによって視野や興味が広がり共感できることも増えると考えて参加しました。前向きな樺島さんのお姿がとても素敵でした!」


・・・若き日本人の中から、ナオさんのような志を持ってアメリカで難民のために活躍する人がいること、ナオさんの活動の意味の大きさに、同じ日本として誇らしく嬉しい気持ちでいっぱいになったセミナーでした。 私たちが今まで全く知らなかった世界への扉を開けてくれたナオさん、本当にありがとうございました。

なお、この日のセミナーの収益はKOSDに寄付させていただきました。 それ以外にも寄付をしてくださった方々が沢山いらっしゃいました。皆さまに心より御礼申し上げます。